(濱口桂一郎著、「日本の雇用と中高年」、ちくま新書、2014年5月)

「ホワイトカラー・エクゼンプション」とは、何か?


 これは、管理職でない、ある一定のサラリーマンに残業代を払わない制度のことです。

 労働省出身の濱口桂一郎先生の説明では、中高年の人件費対策としての残業代カットのことです。

 つまり、ある時期までは、日本の企業は管理職手当ありで残業代ゼロの本来の「管理職」になれない中高年を「スタッフ職」として管理職手当を出して処遇できていました。

 しかし、90年代以降、そのようなゆとりが無くなったものですから、スタッフ職も管理職待遇ではなく、残業代支給の対象になってきました。この残業代の負担を減らすことが、企業の課題になってきたのです。

 ところが、2007年に、「ホワイトカラー・エクゼンプション」の法案を政府が提案した時に、本来、中高年の残業代を減らす話からスタートしたのに、政府の説明が、「自立的な働き方」だとか、「ワークライフバランスが良くなる」などと実態を反映していなかったので、つぶれたわけです。

 安倍内閣の政策は、いつでも、説明の仕方や表現と中身が大きくかけ離れています。「ホワイトカラーエクゼンプション」も、その典型的な例です。私も、秋の臨時国会では、しっかりと追及します。

 一方、濱口桂一郎先生の「日本の雇用と中高年」(ちくま新書、2014年5月)を読むと、戦後の日本の労働政策の変化が判りやすく書かれています。

 1960年代までは、欧米型の「ジョブ型(職務給)社会」を目指していたのですが、石油危機の70年代以降、「職務の限定のない雇用契約」を特色とする「日本型雇用」が肯定されるようになりました。

 その中で、「同一価値労働、同一賃金」の原則は放棄され、年功序列賃金や家族手当など、中高年になれば支出が増える家計を企業がサポートするようになりました。

 80年代以降、「ジャパン・アズ・ナンバー1」などと、日本型の経営方法がほめそやされる中、「日本型雇用」も反省されること無く続きました。

 ヨーローッパでは、あくまでも「同一価値労働、同一賃金」を原則に、家計支出の増加には子ども手当など社会保障で政府が手当しています。

 正規の職員間ですら「同一価値労働、同一賃金」の哲学が無かった日本に、非正規雇用に対して「同一価値労働、同一賃金」を適用するのは難しいのかもしれません。

 また、今、企業が家計を支援できなくなっているにもかかわらず、政府の社会保障施策が遅れていることが、いろんなところで「貧困」問題を生んでいるように思います。

 また、日本でも一時期、定年制は年齢による差別なので廃止すべきだという動きがありましたが、その後、定年制延長、継続雇用などによる方向に動いています。これが、本当に中高年の雇用の保障になるのかは疑問です。

 多くの先進国では、定年制は、年齢による差別なので違法だとされています。

 一律の規制よりも、個人の多様性に基づく柔軟な制度が望まれます。

 もう一度、「同一価値労働、同一賃金」のジョブ型(職務給)社会を目指し、非正規雇用や中高年の雇用改善への挑戦をすべきではないでしょうか。そのためにも、社会保障改革は避けては通れない考えます。