(佐々木毅著「アメリカの保守とリベラル」)


 久しぶりに、大学時代の政治学の恩師である佐々木毅先生の「アメリカの保守とリベラル」を読み返しました。

 二度の政権交代を経て、保守とは何か、リベラルとは何か、一度整理しておきたかったからです。



 ヨーロッパでの「保守主義」は、自由主義や人民主権を否定し、社会的な不平等や権威を擁護するものでした。それに対抗して、個人を国家に先立つものとして位置づけ、その生来の権利を政府の侵害から守るのが「自由主義」でした。

 一方、アメリカは元々身分制といった封建的な社会制度がありませんから、ヨーロッパで言うところの「自由主義」が基本となります。

 その上で、個人主義的で競争を強調する自由放任主義の古いタイプの「自由主義」がアメリカでは「保守主義」と呼ばれるようになります。ヨーロッパから見れば、アメリカの「保守主義」は「自由主義」ということになります。

 アメリカでは、個人のより高度な発達を目標に、経済面での政府の役割を強調する流れが「自由主義(リベラリズム)」と呼ばれました。ヨーロッパから見れば、アメリカの「リベラリズム」はどちらかと言えば「社会民主主義」に近いものです。

 政党で言えば、共和党が保守主義、民主党がリベラリズムという仕分けになります。

 1960年代のアメリカでは、保守主義は「機会の平等」や「小さな政府」を主張し、リベラリズムは「結果の平等」や「大きな政府」を推進します。

 実際には、60年代から70年代にかけて、ニクソンの共和党の前後はリベラルの民主党が政権を担います。

 80年代は、レーガンが代表する共和党の保守主義、いわゆる「新自由主義」が勢いを得ます。

 そして、90年代には、保守主義もリベラリズムをも否定し、「新しいパラダイム」を訴えたクリントンが政権を担います。彼は民主党の大統領ですが、「新自由主義」だけでなく、大きな政府も否定します。

 同時期のイギリスで、サッチャーの「新自由主義」と労働党の社会民主主義を否定し、「第三の道」を訴えたブレアが首相になることと呼応しています。


 この間、日本では長期の自民党一党独裁政治が続き、中曽根首相が、やはり「新自由主義」の系譜を名乗り、小泉政権もその路線を踏襲します。

 細川政権ができるまでは、万年野党の社会党との1.5大政党制が続き、民主党結党後の2000年の総選挙以降、ようやく2大政党制となり、2回の政権交代が起きたわけです。

 しかし、よく見ると、2000年から昨年までの5回の選挙で、民主党の獲得議席は、127、177、113、308、57で、自民党は、233、237、296、119、294となっています。

 自民党は前半、確実に230議席以上を獲得し、民主党は100議席台しかなかったのです。2009年の選挙でバブルとも言える300台に乗せたものの、今回は57議席となりました。仮に、新しい政党の日本維新の会の54議席を足しても111議席。二大政党の一役を担うには足腰が弱すぎるということです。

 民主党が立ち直るためには、もう一度、基本に立ち返り、保守とリベラルの立ち位置を整理するべきだと考えます。

 ちなみに、自民党は中曽根、小泉両政権以外では、当時の社会党の政策を丸呑みし、福祉国家の「大きな政府」を実現していきます。いわば、社会民主主義的な政策を自民党が実施するという意味では、アメリカで言う「リベラル」政党だったため、政党間で保守とリベラルの差異化ができませんでした。

 その結果、日本では、これまで「第三の道」を具現化する政党は現れなかったのだと思います。

 このブログでは、しばらく保守とリベラルの整理を何回かに分けて書いていく予定です。